ペーパーレス化はどのように進めるか?
メリット・デメリットを踏まえた推進のポイント
近年、コスト削減や業務効率化を目的として、紙の書類を廃止することが多くなっています。また、働き方改革や感染症拡大防止観点からテレワークが推進されていることにより、書類のあり方も変わりつつあります。
法令の改正をきっかけに、書類の電子化を進めるという場合もあるでしょう。
しかし、依然としてFAX等の紙を使ったコミュニケーションや、紙の書類を用いた管理業務が根強く残っている企業もあると思います。日本は諸外国と比べ、電子化の遅れが指摘されることもあります。
今回のコラムでは、ペーパーレス化のメリット・デメリットを踏まえながら、電子化を推進していく方法について、お伝えしたいと思います。
目次
1. ペーパーレス化の現状
テレワークの普及
2019年より、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(「働き方改革関連法」)による「改正労働基準法」が施行され、‟ワーク・ライフ・バランス”や‟多様で柔軟な働き方”が推進されています。そのため、働く時間や場所の柔軟性が求められるようになりました。
また、新型コロナ感染症拡大防止のために、在宅勤務を可能にしたり、推奨したりする企業も増えました。
こうしたことから、テレワーク導入企業の割合は、今後導入予定がある企業を含めると、6割近くに達しています。
これにより、Web会議等を利用したリモートでのコミュニケーションが増え、申請・承認フローもクラウド上で行われることになり、電子データでの業務運用が加速しました。
参考:
厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」(https://www.mhlw.go.jp/content/000474499.pdf)
総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf)
法令等の整備
文書の電子化を進めるために法令等の整備も進んでいます。電子帳簿保存法は、「税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律」です。
2022年1月、改正電子帳簿保存法が施行され、電子帳簿導入の事前承認制度が廃止され、タイムスタンプ要件や検索要件についての要件が緩和されるなどの変更がありました。
(詳しくは国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」にパンフレットや動画があるのでご参照ください。)
参考:
国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
2. ペーパーレス化のメリットとデメリット
業務改善の一環として取り組まれることの多いペーパーレス化ですが、闇雲に始めるのではなく、そのメリットとデメリットを押さえた上で、取り組みを行うことが必要です。
まずはメリットですが、主なものは以下の通りです。
メリット
- コストを削減できる
紙の印刷、郵送、保管、廃棄に関わる費用について、消耗品だけでなく人的コストも含めて減らすことができます。 - 業務効率が向上する
デジタルデータになっていることにより、知りたい情報を瞬時に探すことができる「検索性」が向上します。また、複数人での同時閲覧・同時編集も可能となります。業務の属人化を防ぐことにもつながります。 - リアルタイムの情報共有が可能となる
社内、外出先、在宅勤務時は自宅など、どこからでも情報にアクセスできることで、最新の情報を共有することができます。社内のコミュニケーションを円滑にするだけではなく、顧客とのスムーズな情報共有ができるようになります。 - 情報流出のリスクを減らせる
データの流出を懸念する方も多いですが、紙書類は社内にある場合、キャビネットに鍵をかけるといった対策くらいしか対策ができません。また、社外持ち出しによる紛失、置き忘れなどの事故が起こりがちです。
デジタル化した文書は、セキュリティの確保された場所に保存し、アクセス権限を付与することができます。使用するシステムやツールによっては、閲覧のみ可、一部の項目の編集可、すべての項目の編集可、といった細かな設定を行うこともでき、重要な情報の管理ができます。 - データが活用できる
紙書類がデジタル化することで、様々なデータが記録されることになり、ある時期に発行される書類が多い、ある事業所による閲覧が多いなど、今までに気づかなかった傾向や特徴が見えてくることがあります。
こういったデータは、今後の業務改善や顧客満足度の向上などに役立てられる可能性を持っています。
一方で、ペーパーレス化のデメリットもあります。欠点を理解した上で、障壁をどう乗り越えるかを事前に想定することが必要です。
デメリット
- 一覧性が紙の資料に比べて劣る
紙の資料の良さは、ひと目で全体が見渡せる「一覧性」に優れているところで、概要を素早く判断するのには便利ということです。
一部の確認作業や「一覧性」が求められる顧客への提示などでは紙の方が良いということもあるかもしれません。
⇒どのような資料が紙で必要なのか精査した上で、明確なルールを定めて運用することが必要になります。 - ネットワークの状況やシステム不具合の影響を受ける
何らかの障害で文書にアクセスすることが不可能になったり、時間がかかったりすることがあります。アクセスできない状態が長時間に渡れば、業務に影響を及ぼすことも考えられます。
⇒そのような事態を想定し、リスクとして特定、分析、評価して、対応策を事前に検討しておくことが求められます。 - 導入コストがかかる
電子データを保存するためのオンラインストレージ、ファイル共有サービスや、文書管理システム・ツールの導入に費用がかかります。
また、閲覧や編集のためのPCやタブレットなどの機器が必要になることもあります。
⇒想定されるデータの量や情報の機密性、ワークフロー、法令の遵守義務などを整理し、要件をまとめた上で、必要な機能を備えたツールを比較検討します。
データ量が比較的に少なく且つ多くの機能を必要としなければ、無料で使えるサービスもあります。
社内のリソースをさけない、方法がわからないなど比較検討が難しい場合は、外部のコンサルタント等に依頼することも検討できます。 - ツールを使うためのスキル、ITリテラシーが必要になる
システムやツールを利用するためには、当然のことながらそれらを使いこなすスキルが必要になります。また、データ管理の考え方やセキュリティリスクなど知っておかなければならない事柄もあります。
こうしたことが「従来のやり方を変えたくない」という現場の反発に繋がってしまうこともあります。
⇒製品検討の段階で実際に利用する従業員の意見を聞き、トライアルを行うなど使いやすいものを導入することが求められます。また、導入後も製品ベンダーよる使い方の講習会などを利用しながら、従業員の教育を行うことが必要です。組織の規模によっては、部署ごとに推進者を置き、メンバーが使えるようになるまでサポートをすることも必要になります。
3. 取り組みのポイント
上記のメリット・デメリットを把握した上で、以下のポイントに気をつけながら進めることが必要です。
- ペーパーレス化の目的を従業員が理解できるようにする
現状の課題と書類の電子化によって得られるメリットを社内で共有します。 - ペーパーレス先行事例をつくる
対象となる文書を選定し、比較的取り組みがしやすく、効果がわかりやすいものから始め、従業員がメリットを実感しやすくします。 - ワークフローも合わせて改善する
必要に応じて、現状の業務の流れを見直すことも検討します。
電子化によって不要なプロセスがなくなれば、従業員の負荷が減り、働く環境の改善にもつながります。
4. まとめ
これまで述べてきた事柄について、まとめると以下の通りになります。
まとめ
- テレワーク導入企業が増え、リモートでのコミュニケーションが増加。申請・承認フローもクラウド上で行われることになり、電子データでの業務運用が加速した。
- 電子帳簿保存法等の法令も電子化推進のため改正されている。法令等に沿った運用が求められる。
- ペーパーレス化の主なメリットは、コスト削減、業務効率向上、リアルタイムの情報共有、情報流出のリスク軽減、データ活用。
- デメリットは、一覧性が劣る、ネットワークの状況やシステム不具合の影響、スキル、リテラシーの必要など。
- 取り組みのポイントは、「ペーパーレス化の目的を従業員が理解する」「ペーパーレス先行事例をつくる」「ワークフローも合わせて改善する」こと。
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの一環として、ペーパーレス化に取り組まれる企業が増えています。
弊社では、書類の電子化、クラウドストレージでの共有に関することやサービス、ツールの比較についてもご相談を受けております。
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